当院では、音やことばの聞き取りに障害のある方に対して、補聴器の相談を受け付けています。まず、それぞれの患者さんに必要な音やことばの聞き取りに関する検査を行ったのち、補聴器に関する相談を行います。補聴器は適切な調整が必要な専門的知識を要する機器ですので、これらの検査結果を踏まえた適切な調整(フィッティングといいます)が必要です。聞こえにご不自由がある方は、お気軽にご相談ください。
補聴器を使用しても言葉が聞き取れない方には、人工内耳という器械を、手術的に埋込むことによって、聞こえを回復する方法があり、当クリニック院長は、勤務医時代、長年その医療・手術に携わってきました。この治療は、厚生労働省の基準を満たし、認可を受けた限られた施設のみで行われるもので、兵庫県内では、神戸市立医療センター中央市民病院、兵庫医科大学、兵庫県立尼崎病院(院長執刀可能)のみで行われているものです。
成人の難聴者の方は、両耳の聴力レベルの平均がともに90デシベル以上(身体障害者手帳3級以上)の方が対象です。この基準に達しない方でも、言葉の聞き取りの程度、補聴器の効果の程度によっては、対象となる場合がありますので、ご相談ください。
小児、特に乳幼児期からの難聴者の方は、成人と異なる聴力検査を行う必要があります。また、聴力以外にことばを含めた発達の状態を評価する必要があります。当クリニックでは、医師と言語聴覚士により、それらの評価を行うことが可能です。また、人工内耳の対象となる場合であっても、最初は補聴器を使用してその効果を見る必要がありますので、当クリニックのほかに、専門の療育施設と連携して、聞こえとことば、その他の発達を評価していく必要があります。お子さんの聞こえとことばについて、ご心配があればお気軽にご相談ください。
検査は、人工内耳手術の対象になるかどうかのほか、埋込手術が可能かどうか等についても受けていただく必要があり(CT、MRI検査など。手術予定病院に御紹介します)、それらの検査を総合して、手術の可否が決定されます。結果により、手術を受けていただけない場合もありますことをご了承ください。
治療費用は、健康保険が適用され、高額医療補助の対象となります。また、聴力障害の身体障害者手帳を取得されますと、自立支援医療(更生医療、育成医療)の対象になりますので、所得に応じた補助を受けることができます。
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音は聞こえるけれども言葉がわからない。補聴器をつけたけれどもいっこうに効果がない?
補聴器の性能ってこんなものかとあきらめていませんか? 補聴器を使っても、音が聞こえない方、また、音は聞こえても言葉として聞き取れない方でも、人工内耳を使うことによって、“聞こえ”を取り戻すことができます。
人工内耳は、2つの部分からなっています。手術をして、体の中に埋め込む体内部分と体外部分です。体内部分は、電極を内耳の中にいれることによって、聴神経を電気刺激する部分です。体外部分は、ヒトの声や音をマイクでひろって、コンピューターで分析し、神経をどのように電気刺激するかを決める部分です。 実際に体外部分を装着する場合も、従来の耳掛型補聴器とほとんどかわりません。
人工内耳を身につけるには全身麻酔での手術が必要ですが、手術は中耳炎の手術とほぼ同じくらいの手術で、からだに大きな負担はありません。
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人は音や言葉を聴いた時、脳の中で側頭葉という部分が活動します。私たちは、人工内耳を埋め込む手術を行った方が、音や言葉を聴いているときの脳の働きを、ポジトロン断層法(PET)という検査で調べました。すると、人工内耳を通して言葉を聴き、理解しているときには、健聴者の方が言葉を聴いたときと同じ部位が、健聴者の方と同じかそれ以上に働いていることがわかりました。
一方、言葉というものは、幼小児期に獲得するもので、一定の年齢を超えると、獲得が難しくなるいことが知られています。生まれつきの高度難聴の方で、成人してから人工内耳手術を受けた方は、言葉の獲得が難しく、PET検査でも側頭葉の働きはほとんどないことがわかっています。
雑音や言葉を聴いたときの脳の血流。赤〜黄色に光っている部分が、血流が増えた部分。
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